夢うさんブログ ~自然が好き~

森林セラピーガイドで茶道家、写真撮影大好きな”むうさん”による、自然体感レビューブログです

植物に学ぶ生存戦略~面白い!戦略を詳しく解説します!~セツブンソウの生存戦略〜おとなの自然観察&撮影〜

こんにちは むうさんです^^

NHK番組『植物に学ぶ生存戦略 話す人・山田孝之』、の再放送をあらためて見て、面白かったので、番組以外の植物も、自分が調べた生存戦略をブログで書いていこうと思います。

今回は、早春に咲く白い可憐な花のセツブンソウの生存戦略です。

 

ちゃちゃく可愛らしいセツブンソウ

元々、私は、樹木の生き残り戦略に興味があって、自然観察をはじめたのですが、野の花も頑張っていることを番組で知ったことから、興味に拍車がかかりました。

↓樹木の生存戦略、おすすめの本(amazonのリンク先)
イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか―樹木の個性と生き残り戦略

植物は、動けないことから、生き残るために様々な工夫をしています。
それが、人の生き方や、商売の仕組み、組織の戦略などのヒントになると思います。お付き合いいただけると嬉しいです^^

セツブンソウは、スプリング・エフェメラルと呼ばれる仲間の1つです。

スプリング・エフェメラルとは、春の短い間だけ地上に姿を現す多年草のことで、エフェメラはカゲロウ、儚い生命であることから、春の妖精とも呼ばれています。

植物に学ぶ生存戦略~セツブンソウ~

生存戦略1:春先限定で地上生活

落葉樹林では、冬は葉が落ちて、日の光が地面に届き、地上は明るくなります。

 

葉が落ちると日の光が地面まで差すようになる

もし冬のこの時期に葉を広げられれば、光合成ができて、生きていけます。
しかしながら、実際はマイナスの気温になる冬の時期に、葉を広げることはできません。凍って細胞が壊れてしまうからです。

そこで、春になり少し気温が上がり、まだ落葉樹が葉を広げる前の短い間を狙って、春先に地上に芽を出します

そうすることで、早春の陽の光をいっぱい浴びることができ、短い間に芽から葉を広げて、花を咲かせ、種をつくります。
春の妖精は大忙しですが、ニッチ(隙間)を狙うからこそ、小さなセツブンソウも生き残れるのです。

生存戦略2:ライバルの少ない時期に花を咲かせる

早春の、まだ他の植物が目を冷ます前に、花を咲かせ、受粉のための虫を独り占めします。

野の花のほとんどは、
虫が花を訪れて蜜を吸ったり、花粉を食べている時に、虫の体に花粉が付着する
虫は、花粉をつけたまま次の花へ行く
③めしべにその花粉が着いて受粉する
という流れになります。

虫もまだ少ない時期ですが、ライバルが少ないので、虫たちが集まって来ます。

生存戦略3:コストをかけずに、虫を呼び込む

戦略1と2は、スプリング・エフェメラル(春の妖精)たちに共通する戦略でしたが、ここからはセツブンソウならではの生存戦略となります。

《ショーケースは単なる呼び込み》
花を見ると、黄色い粒のついた糸が丸く並んでいます。普通の花では、これは雄しべで、黄色いのは花粉なのですが、セツブンソウは違います。

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黄色いのは、花粉ではなく花びら

黄色いものは花びらなのです。春先に飛ぶ虫にとって、黄色は花粉の目印で、虫は花粉が大好きな食料です。騙された虫は黄色い花びらを花粉と思い込んで、飛んできます。

では、白い花びらに見えるのは何か? というと、萼(がく)なのです。
下の写真は梅の花ですが、花びらの後ろ側に、萼(がく)が5枚ついています。セツブンソウでは、ニセモノのおしべを花びらでつくるために、萼(がく)が花びらになっているのです。

 

梅の花のがくは、花びらの後ろ側にある

そのため、セツブンソウの後ろ姿には、梅の花のような萼(がく)がありません

 

セツブンソウには、後ろ姿に萼(がく)がない

《花粉よりも蜜の方が安上がり》
虫が大好きな食料である花粉は、遺伝子の入った次世代を生み出す大切なもの。そして花粉は、タンパク質や脂肪を含む高級品です。
そんな高級品をやすやす食べられては、かまいません。もっと安上がりなものでなんとかしたいところです。
そこで、蜜を提供しています。蜜は光合成でできる糖類からつくることができ、花粉よりすごく安上がりなのです。

《ニセ花粉で呼び込み、蜜で引きとめる》
花びらを花粉に似せて、お腹の空いた虫たちを呼び込んでいるのですが、ニセモノとわかれば、虫たちは、すぐに去って行ってしまいます。そこで、蜜を出して、虫を引き止めます。花粉ではないけど、蜜があったので、虫たちは足を止めて食事をしてくれます。

では、花粉はどこにあるかというと?手前にある紫色の雄しべの先に白い粉が花粉です。ニセモノに寄り付いた時に虫の体に花粉を付着させる戦略です。

 

紫色のおしべに白い花粉がついている

実際に観察してみると、上の写真の通り、確かに白い粉が紫色の雄しべの先についています。

植物に学ぶ生存戦略~感じるマクロ写真~

そんなセツブンソウを、マクロ撮影してみました。
黄色の花びらは、白い萼(がく)から離れてツヤツヤさせて目立ち。黄色い花びらに取り付くと虫の背中に花粉がつくことが想像できると思います。
お気に入りの写真となりました。

 

つやつやの黄色の花びら

セツブンソウの花の高さが、10センチもないので、地面に手をついての撮影です。何人か人が通ったので、他の人からは変な人だったかもしれません。

植物に学ぶ生存戦略~おすすめの本~

最後に、私のおすすめの本をご紹介しておきます。

『野に咲く花の生態図鑑』 多田多恵子/著

さまざまな植物の生存戦略や、生態などが、やさしくかかれています。
一番の魅力は、写真がたくさん掲載されていて分かりやすく、頭で理解するだけではなく、フィールドにでて実際に見ているような感じで読めることです。

今回ご紹介したセツブンソウをはじめ、タチツボスミレ、ヤマボウシ、ホオノキ、カラスウリ、カタクリ、マンリョウ…。
取り上げられている34種類の植物のことがわかりますご興味ある方は、是非チェックしてみてください。

 

植物に学ぶ生存戦略で紹介された植物以外であったり、紹介された植物についてより詳しく知りたい方へ、上の本を含むおすすめの本を6冊ご紹介しています。
こちらもチェックしてみてください。



【NHK番組「植物の生存戦略 話す人・山田孝之」の紹介記事】
↓ツユクサ
植物に学ぶ生存戦略(ツユクサ)
↓梅の木
植物に学ぶ生存戦略(梅の木)
↓オオイヌノフグリ
植物に学ぶ生存戦略(オオイヌノフグリ)

【参考文献】
・野に咲く花の生態図鑑 多田多恵子著