こんにちは むうさんです^^
今回は、茶道のエッセイをご紹介いたします。
堅苦しくなく茶道を楽しめるエッセイですので、お付き合いください。
最初に、私とお茶の関係をお伝えさせてください。
私は、遠州流茶道の名取(なとり)、奥之伝を終了し、宗号をいただいております。
茶道の楽しさを、この3部作を通じてお伝えできればと考えております。
『日日是好日』は、そんな私が茶道を始めてから知った、エッセイストの森下典子さんがお茶のお稽古などを描いた本です。
先生とのリアルなやり取りや、お茶のお稽古で感じることへ、共感し、
とくに、お茶と自然、季節、五感とのつながりを言葉にしてあることで、五感を大切にする森林セラピーのガイドで、自然が好きな私へ、スッーと入ってきました。
続編を読みたいと思っていると、
その後に『好日日記』、『好日絵巻』を書かれていて、期待以上でした。
ロングセラーの『日日是好日』と、『好日日記』、『好日絵巻』は、森下典子さんの三部作となっています。
前回は、『日日是好日』をご紹介しました。
今回は、この3部作から『好日日記』、『好日絵巻』をご紹介します。
「二十四節気」と「茶室」を味わう~好日日記~
『好日日記』は、
冬、春、夏、秋、また冬と章に分かれて、年の初めから、年の瀬までを日記のように、二十四節気ごとに書かれています。
お茶の世界にどんな行事があるのか?
お茶のお稽古をされている方には、参考になると思います。
年の初めは「初釜(はつがま)」です。
好日日記では、青竹の花入れを使っています。
年の初めは、新たな気持ちになるために、新たに用意する。これがおもてなしとなります。
遠州流では、初釜に合わせてお家元が竹を切り、花入れ、茶筅をつくります。
年始めは、青く、新しい青竹で作った茶筅を使ってお茶を点てるのです。
この本ならではなのは、森下典子さんが描くイラストにあります。
3冊目の好日絵巻は、イラストメインの本ですが、好日日記でも、ところどころに、彩りあるお菓子のイラストであったり、綺麗な色のお茶碗の絵が挿入されていて、文字だけでは分からないお茶の世界を伝えてくれます。
お茶が伝える美しい言葉~好日日記~
押し頂く(おしいただく)
『好日日記』を読んでいると、普段使わない、美しい日本語が出てきます。
その中の一つが「押し頂く(おしいただく)」です。
”「どうぞお菓子をお取り回しください」
両手で押し頂き、”
という描写が書かれています。
お茶のお稽古をしていると、私が知らないこと言葉も多く、お茶のお稽古を始めて知った言葉が、「押し頂く」でした。
この本で上のような描写が出てきて、久しぶりに昔のお稽古のことを思い出しました。
ある日お稽古の中で、先輩が私に、「ここで、押し頂くのよね」とお作法の説明をしてくださいます。
でも意味と具体的な動作が分からず、私は、聞かざるえませんでした。
「そうね、普段は使わないからね」と、優しく言ってくれました。
その時の私が、「押し頂く」なんて、格好いい言葉を覚えたと思っていたのを、覚えています。
下萌(したもえ)
節分は、立春の前日です。
立春は春の始まりですから、暦の上では、季節が冬から春に移る、季節の分れ目の文字通り、節分となります。
そして節分の翌日が「立春」です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
そんな立春の時に、
“黒土のような色の「しぐれ饅頭」だ。”
と、このお菓子をなぜ立春の今日、先生はご用意されたのか?
と森下さんは思ったようだ。
“「先生、これは……」
「銘は『下萌』ですって」
下萌とは、冬の大地の中から芽吹き始めた草のことだ。黒土のようなしぐれのひびの下から、中のこし餡の明るい若草色がチラッと見える”
~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして、お菓子の『下萌』の餡が若草色のところを、柔らかいタッチのイラストで描かれていて、お菓子の雰囲気がよくわかります。
下萌(したもえ)、私はこの言葉を知りませんでした。
でも、日本人は自然をよく観察して、それを銘(めい:お菓子のテーマ、タイトル)として、取り入れています。
本当に、日本の自然を表現する言葉は美しい。
そして、
この本は、お稽古の時の、ちょっとしたやり取り、そして茶道のお稽古をすることで知って感じていく季節感や、その日本語での表現が、前作以上に書かれています。
日本文化としての茶道と、日本人が自然を細かく観察して、それを文化の中に取り入れてきた事が、よく分かるのです。
~好日絵巻~
『好日絵巻』は、フォトエッセイちっくな、イラストエッセイです。
イラストが主役で、それを眺めながら、文章を目で追っていく感じです。
イラストは水彩絵具で描かれているようで、優しいタッチで、色も透き通るような、それでいてしっかりと色を出すところは出しているイラストです。
面白いのが、巻末にイラストの索引があることです。
イラストが小さく載っていて、それぞれがどのページに掲載されているのか、書かれているのです。
茶碗で14、茶器で6、茶入と仕覆で2、香合で5、水差が4、蓋置が5、茶花が10、和菓子(主菓子)が15、和菓子(干菓子)が12、
で全部で73個のイラストが載っています。
上にあるように、それぞれお茶のお稽古などで使われるお道具や、お菓子など。その彩りが美しいのです。
私が好きなイラストは、『木槿(むくげ)』と『縞葦(しまあし)』。
木槿は竹のかごのような花入れで、そこに一輪の縞葦の花が入れられているもので、七夕の時期に、涼しさ届けようという「おもてなし」を感じるイラストです。
また、『おぼろ饅頭』のイラストも好きです。
そこに添えられている言葉も素敵で、
”張りつめていた寒さがゆるみ、夜道を歩くと、あちこちで沈丁花の香りに出会う。そんな春の宵、見上げた月は、おぼろである。”
おぼろ月は、「やわらかくほのかにかすんでいる春の月」のことですが、あまり使わない言葉ですが、素敵で美しい言葉だと感じます。
『好日日記』、『好日絵巻』、『日日是好日』の3部作
『好日日記』と『好日絵巻』は、単なるお茶の日記ではないような感じがしています。
「日本人が、自然や、季節と共生し、作り上げた文化」を、言葉やイラスト、わかりやすい表現で、伝えてくれています。
森下典子さんの3部作、是非、手に取ってみてください。
▼『好日日記』
▼『好日絵巻』
▼『日日是好日』
※この記事で” ”で囲った箇所は、『好日日記 森下典子著』、『好日絵巻 森下典子著』より抜粋した部分となります。