夢うさんブログ ~自然が好き~

森林セラピーガイドで茶道家、写真撮影大好きな”むうさん”による、自然体感レビューブログです

樹木の個性と生き残り戦略3部作:ブックレビュー~『イタヤカエデは なぜ自ら幹を枯らすのか 渡辺一夫著』

こんにちは むうさんです^^

私が、樹木を好きになり、より知りたいと思うようになった本が、樹木の個性と生き残り戦略シリーズ3部作、

『イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか』
『アセビは羊を中毒死させる』
『アジサイはなぜ葉にアルミ毒をためるのか』

です。

イタヤカエデは なぜ自ら幹を枯らすのか 渡辺一夫著』

イタヤカエデは なぜ自ら幹を枯らすのか 渡辺一夫著』

それまでは、木はあるものとしか見ていないので、“生きている物“ではなく、”単なる物”でした。人工物と何ら変わらなかったのです。

この本を読んで、その考えは一変しました。「生きて子孫を残すための戦略を持ち、そして、進化してきた。」という、当り前のことを知ったからです。

春 樹木の生命の息吹を感じる

春 樹木の生命の息吹を感じる

今回は、
その生きる残るための戦略を、樹木ごとに紹介してくれている、この3部作の中からタヤカエデは なぜ自ら幹を枯らすのか 渡辺一夫著』をレビューします。

▼イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか

▼アセビは羊を中毒死させる

▼アジサイはなぜ葉にアルミ毒をためるのか

樹木の個性と生き残り戦略

樹木という大きく動かない植物がどのように生きているのか、生き残ろうとしているのか、その戦略がとてもおもしろいのです。

樹木の個性と生き残り戦略

生存戦略は、大きく分けて3つのタイプに分かれる。

①先駆者:植生のない空いた土地(撹乱地)にまっさきに侵入し定着するタイプ

②競争に強いタイプ:他の種との競争に打ち勝って優占するタイプ

③ストレスに強いタイプ:先駆的でないし、競争に強くもないが、劣悪な環境条件に耐えられるタイプ

例:タブノキ 悪い条件に耐えたり、エネルギーの無駄をなくすことによって繁栄している。忍耐、堅実、安定

上の①、②、③を見ていると、森や林の中で静かにしている樹木が、生き残るために戦略を立てて頑張っているんだと、そして同じように見える樹木ですが、それぞれが異なる戦略で戦っているなど、思いもしませんでした。

樹木の個性と生き残り戦略

樹木の個性と生き残り戦略

それぞれの樹木の個性は多岐にわたりますが、この3部作にかかれている一部を紹介すると、

生き残るための樹木の個性

●住む場所
 例:シラカバ 高原の牧場など、冷涼な気候で明るいところ。

●受粉の方法
 例:アカマツ 雄花は春に開花し、その花粉が風に運ばれて、別のアカマツの雌花にたどり着き受粉する。

●種子を最初につける年齢
 例:ブナ 40年 大きくなることを優先して、繁殖は後まわし。

●種子の散布方法
 例:シラカバ 翼のついた軽く小さな種子。たくさんつくって、風に乗せて散布。

など、樹木によって、そんなに違うの!と、この3部作で知らされるのです。

著者の渡辺一夫さんは「森の案内人」で樹木のエキスパートです。

著者の渡辺一夫さんは第一人者

著者の渡辺一夫さんは第一人者

▼イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか

イタヤカエデは なぜ自ら幹を枯らすのか

36種類の樹木の戦略

樹木の個性と生き残り戦略”3部作の第1作が、イタヤカエデは なぜ自ら幹を枯らすのか 渡辺一夫著』です。

この本だけで、36種類もの樹木を紹介し、3部作では、36+28+19=83種類もの樹木の生き残り戦略を紹介してくれています。

そして、最初のページから釘付けでした。

樹木の住む環境

樹木が住む、生きる上で、生き残りやすい環境と生きにくい環境があるとは。
本書で最初に紹介されるのがタブノキです。

タブノキは、葉の厚い、常緑樹

タブノキは、葉の厚い、常緑樹

上で紹介した通り、タブノキの戦略は、
タブノキ 悪い条件に耐えたり、エネルギーの無駄をなくすことによって繁栄している。忍耐、堅実、安定。」
ですが、実際はどのようなのでしょうか?

そのタブノキが生き残るために、どういう場所を選んでいるのか、冒頭に書かれています。

タブノキの住む場所

「タブノキは本州~九州の海岸近くによく見られる。
本州~九州の沿岸部には常緑樹が多い。これは、沿岸部は冬でも暖かい気候であり、常緑樹は暖かい場所を好むからだ。
同じ常緑樹の中でも、カシ類は比較的寒さに強い。このため内陸や低山によく見られるが、タブノキはあまり寒さに強くないため、それほど内陸には分布しない。
タブノキは常緑樹の中でも特に塩分に強いことも、沿岸でよく見かける理由のひとつである。」

樹木のデザイン

そして、環境にあったデザインがされているのです。
そう、タブノキは塩分に強いデザインになっているから海の沿岸に住むことができるのです。

そのデザインとは、

塩分は植物の大敵

海岸は風が強く、風に舞い上がった涙しぶきが植物にふりかかる。植物にとって塩分は大敵である。
塩分が葉の中に侵入すると、細胞の中の水が吸い出され、細胞の一部が縮んで壊れてしまうのだ。漬物の野菜から水が抜けていくのと同じ原理である。こうなると葉は枯れてします。

そうです。塩分は植物の大敵なのです。
ですから、海の沿岸では、特別なデザインが必要なのです。

塩分に強いデザイン

タブノキの葉は分厚く、表側はてかてかとつやがあり、裏側も白っぽい。葉の表側のてかてか光っている部分や裏側の白い部分は、ワックス、つまりろう成分である。このワックスが、塩分の侵入を防いでいるのだ。

少し考えれば当たり前なのですが、実際に、タブノキが生き残るために、こういう環境で生きているということを知って、初めて実感しました。

実際に葉っぱを見てみると、新葉なんてテカテカ!です。

タブノキのテカテカの新葉

タブノキの新葉はテカテカ

この本の特徴

この本の良い所は、読んで知識がたまると、次の樹木について読んだ時に、その知識が使えることです。

特に、この本で紹介する生き残り戦略のベースにあるのが、エネルギー収支です。

例えば、タブノキの子どもの木(稚樹)は、暗い所でも生きられる特徴があるという説明の中で。

タブノキの子どもの木

暗い森の中では、日陰に弱い木の稚樹は成木に育っ個となく枯れてしまう。
しかし、どうやらタブノキの稚樹は、暗くて光合成による栄養の生産があまりできなくても、エネルギーの消費を少なくすることによって生き延びているようだ。つまり、収入が少ない時は支出を抑えることのできる、やりくり上手であるらしい。

このように、その環境で得られるエネルギーと、消費してしまうエネルギーの収支がマイナスになって枯れてしまわないように、主に消費を削って生き延びるのです。

樹木の個性と生き残り戦略3部作はおすすめ

ご紹介した通り、樹木が様々な戦略、そして個性をもって生き残ろうとしていることを教えてくれます。

身近な樹木もたくさん載っています。例えば、『イタヤカエデは なぜ自ら幹を枯らすのか』では、スダジイアカマツモミヤマザクラケヤキブナカツラなど36種類もの樹木について紹介されています。

『イタヤカエデは なぜ自ら幹を枯らすのか 渡辺一夫著』

『イタヤカエデは なぜ自ら幹を枯らすのか 渡辺一夫著』

このように、樹木の戦略をわかりやすく教えてくれる『”樹木の個性と生き残り戦略”3部作』は、とてもおすすめです。是非、チェックしてみてください。

▼イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか

▼アセビは羊を中毒死させる

▼アジサイはなぜ葉にアルミ毒をためるのか