夢うさんブログ ~自然が好き~

森林セラピーガイドで茶道家、写真撮影大好きな”むうさん”による、自然体感レビューブログです

【書評】『絵を見る技術 名画の構造を読み解く 秋田麻早子著』~レビュー~写真の構図の勉強に超おすすめです~

こんにちは むうさんです^^

写真の構図を知りたくて、写真の構図の本を何冊か読みました
読んだ直後は、これで構図がバッチリの写真を撮れると、三分割構図などを試してみるのですが、何かしっくりきません。

三分割構図は無難という例

三分割構図

確かに、三分割した交点に主役を置いて撮影すると、そこそこの写真は撮れますが、無難で当たり前のように感じてしまうのです。

写真の構図の本では、いろいろな撮影写真を見せて説明してくれますが、なぜ、それがいいのか?をきちんと原則から説明してくれません。本と同じ場面はないので、写真の構図の本を読んでもわかった感じがしないのです。

そんなときに出会ったのが、絵画の構図の本、今回紹介する絵を見る技術 名画の構造を読み解く 秋田麻早子著です。

絵を見る技術 名画の構造を読み解く 秋田麻早子著 表紙

絵を見る技術 名画の構造を読み解く 秋田麻早子著

もしかして、写真でなく絵画の本なら、原則が書いてあるのでは、と期待しながら読み始めると、期待以上の内容でした。写真の構図の考え方をわかるようになりました。もちろん、まだまだですが、この本を読んで自分でわかった気持ちになれたのは、大きな一歩でした。

『絵を見る技術』 目次と内容 

絵を見る技術の目次です。写真に応用できる原則が載っています。
※『 』の部分は本書からの文章の抜粋となります。一部、太字などにしています。

『絵を見る技術』目次
第1章 この絵の主役はどこ?
第2章 名画が人の目をとらえて放さないのはなぜか?
第3章 「この絵がバランスがいい」ってどういうこと?
第4章 なぜ、その色なのか?
第5章 名画の裏に構造あり
第6章 だから、名画は名画なんです

第1章の主役から、2章の見る経路、それからバランス、色、構造、なぜ名画なのか?と写真撮影の構図でも出てくる言葉ばかりです。この本の具体的な内容が、本の最初の方にまとめてありますので、ご紹介します。

第1章では、
絵の中の「主役」はどこか、その判断の仕方を学びます。脇役がどうして脇役なのか、主役とどういう関係にあるかも、浮かび上がってみえてきます。』

第2章では、
『絵の中には、実は見る順路を示した「経路」があって』と、視線誘導の話を学べます。

第3章では、
『「バランスがいいね」と言われるとき、具体的にはどう計って判断しているのかを解説します。名画は、必ずバランスが取れているものですが、それも人が知らず知らずバランスを判断しているからです。』

第4章では、
『バランスのことは考えたことがなくても、色についてなら抵抗なく感想を述べられる人も多いでしょう。それだけ色が与える印象は強く、予備知識がないと色だけ見て終わることもあります。第4章ではこの「色」の働きについて、三つの観点から掘り下げていきます』

第5章では、
『ここまで見てきた要素を、画面の中にどう配分するかが第5章のテーマです。画面内に色や線などをどう配置するかは、絵のテーマと大きく連動しています。名画が「ビシッと決まって見える」のほ何故なのかーそこで比例の果たす重要な役割を知ることは、絵の狙いや効果を知る上で欠かせません。』

第6章では、
「表面的な特徴」と「構造」とを分けて考えてみます。そして、珠玉の一枚をじっくり見ることで、全ての要素のおさらいをしましょう。』

これらが、原則からしっかりと、そして難しくなく、絵画の例を示しながら、わかりやすく書かれています。

『絵を見る技術』の内容のさわり

この中から、さわりの部分をご紹介します。

主役はどこか?

高橋由一 『鮭』を題材にしていて、『鮭』は壁に鮭が吊るされたシンプルな絵です。

主役は絵を見てパッと目につく場所などと、基本的な原則などが書かれた後に、下のように書かれています。

『さらによく見ると、無地の背景は上部が暗く、鮭の左側に影が描かれています。そのために顔や赤身部分が縁取られたようになっていますね。これも鮭に目が行く理由の一つです。』

写真でも、影のつくり方、影のでき方はポイントとなりますが、上のような縁取り効果は意識していませんでした。
写真はどうしてもシチュエーションの限界があり、狙ったのか? シチュエーションのせいなのか? わかりづらいですが、絵画は人が描くので、明確な意図があり
狙っている効果もわかりやすいのです。

絵を見る技術 名画の構造を読み解く 秋田麻早子著

絵を見る技術 名画の構造を読み解く 秋田麻早子著

四つの角に潜む引力

写真でも、四隅が大切といわれますが、あまり理由を考えてきませんでした。

この本には、はっきりと大切にする理由が書かれています。

『実は、四角い画面には、何も描かれていなくても、デフォルトで目の注意を引きつける引力がそなわっていて、画家はそれに対抗する必要があるからです。最も強い引力を持つのは、画面の中心です。
二番目に注意を引きつけるのは、角です。だから、四角とか三角とかの形を、人は一瞬で認識できるのです。ということは、視線が中心から外れ、角に近づけば近づくほど、目はそっちにキュッと吸い寄せられてしまうということ。そして、そのまま画枠の外に出て行ってしまうのです。』

それほど、角の力は強いようです。写真もしっかり見てほしいなら、四隅をどうするかは大切なのです。
絵画で、具体的にどのような工夫をしているかを、いくつかの絵画で、わかりやすく説明してくれています。写真に応用しようと考えています。

バランスについて 小さくても「効く」理由

ジャン=レオン・ジェローム『嘆きの壁』を見ながら、説明しています。

この絵は、画面の左側に立っている男性がいますが、右側は奥へ向かって壁が続いているだけの絵です。
そのため、一見、左側に比重があるように思いますが、なぜかバランスが取れているように感じるのです。その理由は、右側の床の敷石が欠けて小さく黒くなっていることで、バランスしているようです。

本書には、
『欠けた石の部分に指を置いて隠してみると、いかに効いているかが分かります。』
と、確かに隠すと効いていることが分かります。

この絵は登場人物(男性と、敷石)が少なくシンプルです。こういう絵で説明してくれると、分かりやすいなぁと実感しました。

私は、この本のこの絵の説明で、バランスを初めて実感としてわかることができました。この本にありがとうです。

ご紹介したのは、ほんのさわりで、この本は約150の絵画で、絵を見る技術について様々なことを説明してくれています。
写真の構図も、絵画の構図も、人が観賞するため重なる部分が多く、この本に書かれていることは、絵画特有ではないので、かなり参考になります。

構図を基礎から学びたい、構図の基本を押さえたい方に、とてもおすすめの本です。是非、チェックしてみてください。